B.P.net vol 8  
発行日 平成23年7月1日
慌てることはない 〜 脳腫瘍について 〜 院長 河野 拓司
 脳神経外科が一般外科から独立した昭和30年代、脳外科医が主人公の「ベン・ケーシー」というアメリカのテレビドラマが日本で放映され、話題になったことがあります。脳腫瘍におかされた盲目の女の子の腫瘍を見事に取り除き、少女に光を与えた場面は、特に印象的でした。
  さて、一般的には非常に恐ろしい病気のひとつとして認識されている脳腫瘍ですが、悪性腫瘍は全体の35%程度です。悪性腫瘍の症状はできる場所によっても異なりますが、「慢性の頭痛」・「嘔吐」・「てんかん発作」などが代表的です。脳の悪性腫瘍は、他の臓器にできる悪性腫瘍、すなわち「がん」と違って転移することは稀ですが、脳組織の間を這うよううに発育するため、手術をしても全部取りきることは困難です。また、発育のスピードが早く、見つかった時にはすでにかなり大きくなってしまっているという状況がほとんどです。とにかく「早いうち、小さいうち」にCT,MRIなどで発見するしかありません。もし見つかっても脳卒中のように慌てる必要はありませんので、手術・各種の放射線治療・免疫療法などを主治医の先生とじっくり検討、選択したうえで治療することが肝要です。
 
 一方、脳腫瘍には比較的良性のものが多くあり、それらは理論的には全部取り除くことが可能です。しかし、実際のところ脳は各種脳神経(視神経などの各種感覚器、咽頭などを支配する神経)や動静脈があり、脳腫瘍のできた場所によっては全摘出できない場合があるため注意が必要です。
  代表的なものは聴力をつかさどる聴神経にできた聴神経腫瘍、脳を包み込んでいる髄膜からできる髄膜腫、ホルモンを分泌する下垂体にできる下垂体腺腫などがあります。聴神経腫瘍は、耳鳴り・難聴・めまいなどの症状で発症します。いずれもよくある症状ですから、しばらく医者にもかからず放置されている場合があり、発見も遅れがちです。治療のポイントは豊富な経験のある脳外科医に手術してもらうこと、これに尽きます。
そして第二の手段としてガンマナイフやサイバーナイフという放射線治療があります。これはガンマ線やX線を病巣に向けて多方向から集中的に照射して治療を行なうものです。手術、放射線治療のいずれにしても合併症はつきものです。良性腫瘍だからといって安易に考え、治療を受けると大変なことになりかねません。 「お医者さんにすべてお任せ」の時代は過去のこと、今は医者が選ばれる時代です。特に良性の脳腫瘍は医者の経験・技術がすべてと言っても過言ではありません。慌てることはありません。
じっくり医者と治療法を選んでください。
CT と MRI
CTとMRIにはそれぞれ特徴があり、どちらの検査が「上」ということはありません。特に一刻を争う脳卒中の鑑別診断を行なう際には、患者さんの症状や発症の状況などから、医師はCTとMRIのどちらの検査を行なうかを迅速に判断する必要があるのです。
今回は、最近特にお問い合わせの多いCTとMRIについて、その特徴や違いをご紹介します。
  「CTよりMRIの方が優秀な機械だろう」「CTではなくMRIをやってほしいんだけど…」とお考えの方は是非参考になさってください。
◇CT検査 → X線 を使い断層写真を撮る
【特徴】
@出血病変に有用(特に生命の危機となるクモ膜下出血など)
A骨の情報が良くわかる(頭蓋骨腫瘍・骨変形や破壊・骨折)
B3D画像(立体画像)が瞬時に得られる
C石灰化病変に有用(脳腫瘍など)
D検査時間が短い
E急性期の小さな脳梗塞の描出は難しい
脳疾患の最初の検査としては、CTが第一選択となる

◇MRI検査 → 磁石 を使い断層写真を撮る
【特徴】
   @小さな病変に対し有用(小さな脳梗塞や小さな腫瘍)
   A完全に症状(麻痺・呂律不良など脳梗塞が疑わしい)が出ている場合は、
     MRIが最初の検査となる。
     ※ただし、出血も念頭に置く必要があるのでCT検査が先の場合もある
   B骨(石灰化)の情報がわかりにくい
   C検査時間が長い
     ※当院では緊急性の脳梗塞疑いの場合には予約の患者様ご了承の上
      お時間をいただいて検査を行なっています
   D磁石を使うためペースメーカーを装着している方は検査ができない。また
   体内金属(手術の時に入れた金属)がある方は検査不可能な場合がある。
脳疾患で緊急性(麻痺・呂律不良・強いしびれなど)がある場合の第一選択となるクモ膜下出血や小さな脳出血にはあまり適切ではない
 
当院は、脳神経外科医・神経内科医の専門的知識に基づいて、それぞれの疾患に応じた最善の検査方法を選択しておこなっておりますので、安心して受診なさってください。
神経内科について
「神経内科は、どのような病気を診るのか?」 「精神科や心療内科と、どう違うのか?」など、神経内科はどんな診療科なのか、よく分からないという方がいらっしゃると思います。
このコーナーでは、神経内科の症状や他の診療科との違いなどをご紹介いたします。

1.神経内科とは?
  神経内科は神経系と筋肉の異常による疾患を扱う科です。「神経系」とは、脳と脊髄・末梢神経のことで、この神経系に異常をきたすと、様々な症状が現れます。
具体的には、身体を動かしたり感じたりすることや、考えたり覚えたりすることができなくなった時に神経内科の病気を疑います。
2.主な症状
  ・頭痛 ・めまい ・もの忘れ
  ・むせ,飲み込みにくさ ・意識障害 ・ひきつけ,けいれん
  ・歩きにくい,ふらつき,つっぱり ・しゃべりにくい,ろれつが回らない ・ものが二重に見える
  ・勝手に手足や身体が動いてしまう ・動作がにぶくなる ・手足のふるえ
  ・手足のしびれ,力の入りにくさ    
3.神経内科で診療する主な病気
  @脳や脊髄の血管がつまったり破れたりして生じる病気
   (脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳内出血など)
A中枢神経や末梢神経の細胞がだんだんと変性して生じる病気
   (アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症など)
B神経系に細菌やウイルスなどの感染性物質が入り込んで生じる病気
   (脳炎、髄膜炎、クロイツフェルトヤコブ病など)
C神経系の細胞に対しての免疫系の異常な反応によって生じる病気
   (多発性硬化症、重症筋無力症、ギランバレー症候群など)
  D発作性にけいれんや意識障害などを生じる病気
  (てんかん、失神、めまいなど)
E頭痛を繰り返す病気
  (片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経痛など)
F脊髄や神経根の病気
  (脊髄症、脊髄空洞症、脊髄炎など)
G末梢神経の病気
  (多発神経炎、顔面神経麻痺など)
H筋肉の病気
  (筋ジストロフィー、多発性筋炎、周期性四肢麻痺など)
4.神経内科と間違われやすい診療科(精神科・精神神経科・心療内科)
  【精神科・精神神経科】
主に“心の病”を扱います。精神的な問題が不安などの形で心の面に強く現れれば、精神科の病気が疑われます。通常、脳や神経系を検査しても(CT・MRI・脳波など)明らかな異常は認められません。
  ★統合失調症,そううつ病,神経症など
【心療内科】
心療内科は悩みやストレス・ショックなど、精神的な問題がもとで身体に異常をきたす病気を扱います。精神科が心の症状がメインであるのに対し、心療内科は身体の症状が主な訴えになります。
  ★パニック障害,心身症,不眠症,拒食症など


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